きっと、できる。


会社の机を整理していたら、一枚の写真が目についた。
犬の写真。


もう何年前のことか?
おそらく7、8年は経つんじゃないか。
いやもっとか?
2000年より前だったような気がする。
そんな遠い昔の話。


残業で、夜遅くまで仕事をしていて、夜食の買い物をしに行った時のことだったと思う。
歩道に、数人の人が集まっていた。
何かと思って、近づくと、
みんな、広い通りの真ん中当たりを見ていた。
そこには、一匹の犬がうずくまっていた。


夜中の暗い道に、次々と、タクシーが猛スピードで通り過ぎていく。
車が途切れる様子もない。
その真ん中に、一匹の犬が取り残されていた。


このままでは、轢かれてしまう。
誰もがそう思っただろう。
しかし、猛スピードで通り過ぎる車に、
誰も、助けにいくことができなかったようで、
ただ、ただ、心配そうに見ていた。


その時の、自分が何を思ったか、正直覚えていない。
ただ、助けなければ・・・。
そう思うと、3車線の道の真ん中まで、走り出した。
車のクラクションが鳴ったような気がした。
犬を抱えたとき、すぐ近くを、猛スピードで、黒い車が通り過ぎた。


結局、歩道にいた人たちとともに、その犬を獣医に担ぎ込んだ。
血が出ているようでもなかったので、助けることができて、良かったと思っていた。
しかし、次の日、動物病院から電話があって、亡くなった、と。


今でも、悲しくなる思い出。


その後、犬の飼い主の方が、ご挨拶に見えたときに、いただいた写真。
それが、今日、目に着いた写真だった。


今でも、あの現場、出勤するたびに通るが、そのたびに思い出す。
あのすがるような目。
助けてあげられなかった・・・つらさ。



そして、今日、この写真から、
あの時の、何も考えずに車の流れの中に飛び出していった自分、
あの勇気があれば、何でもできるんじゃないか、
と語りかけられた思いがした。
きっと、がんばれる。